平成30年7月に民法(相続法)が大きく改正され、配偶者の権利を守る制度として「配偶者居住権」が創設されました。
相続法は、1980年(昭和55年)に改正されて以降大きな改正は行われていませんでしたが、高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、約40年ぶりに大きな見直しが行われたことになります。
夫婦二人で住んでいた自宅が、夫が亡くなったことにより妻以外の人が相続すると、妻は住む家を失ってしまいます。
配偶者居住権は、そんな妻の居住権を守る制度として設けられました。
相続開始時に、配偶者が被相続人が所有する建物に住んでいた場合、終身または一定期間その建物を無償で使用することができる権利です。
法律的に言うと、建物の権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割時に、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができるようにしたものです。
出所:法務省「配偶者居住権について」より抜粋
配偶者居住権は、引き続き自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権ではないので、売却や賃貸などはできません。その分、評価額は低くなります。
ですので、配偶者はこれまで住んでいた自宅に住み続けながら、預貯金などの他の財産もより多く取得できるようになり、配偶者のその後の生活の安定を図ることができます。
この制度には、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。
配偶者短期居住権は、遺産分割が終了するまでの期間についての居住権(住宅のうち居住部分)を確保する権利です。
権利を譲渡することはできません。
この権利は、遺言書等に記載しておく必要はなく、無償で住んでいた場合には相続開始とともに当然に発生します。
遺産分割協議では考慮されず配偶者の相続財産の取り分にも影響しません。
配偶者は次のいずれか遅い日まで居住することができます。
配偶者居住権は、居住建物を終身または一定期間、無償で使用・収益できる権利です。
店舗等、居住部分以外も含む受託全部に対して権利が発生し、登記をすることで第三者に対抗することができます。
また、評価の対象となり、遺産分割で考慮されることとなりますので、配偶者の相続財産の取り分に影響します。
なお、配偶者短期居住権と同様、権利を譲渡することはできません。
配偶者短期居住権とは異なり、相続開始とともに当然に発生する権利ではなく、次のいずれかの場合に取得することとなります。
配偶者居住権は、建物・土地それぞれ評価を行います。
配偶者居住権の評価額(建物)= 建物の相続税評価額 – 配偶者居住権が設定された所有権の金額((建物の相続税評価額 × ((残存耐用年数-配偶者居住権の存続年数)÷残存耐用年数))× 存続年数に応じた民法の法定複利による複利現価率))
配偶者居住権の評価額(土地)= 土地の相続税評価額 – 配偶者居住権が設定された所有権の金額(土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定複利による複利現価率)
ポイントは、配偶者居住権の評価を計算するためにはその他の権利を先に計算する必要があることです。
出所:法務省「配偶者居住権について」より抜粋