事業承継は、事前の対策を早めに検討する事が肝心です。
いざ承継の段階になったときに慌てて対策を考えても時既に遅しとなることが多いからです。
事業承継問題は法人だけの問題ではありません。個人であってもしっかりと考えなければならない問題です。
(以下、子が後継者として決まっているケースを想定)
親である先代経営者のときは、たとえ、子である後継者が営農に携わっていたとしても収入は親のものとなります。
収入が親に集中する結果、親の財産が増加するので、相続税額も増加してしまいます。
そこで対策としては、後継者である子に農業経営を委譲することによって、先代経営者が得ていた収入を後継者の収入とすることができ、相続税の節税対策とすることができます。
経営移譲の手続きや留意点などは別記事にてご紹介しています。
青色申告をしている場合、生計を同じくする子に給与を支給することによって、親の収入を後継者である子に移転することができます。
結果として、先代経営者である親の財産が減るので、相続税の節税対策となります。
後継者である子の立場からみた場合、将来、事業を承継した際の準備金を蓄えることができます。
なお、青色専従者給与については、労務の対価として適正な金額であることが必要です。
また、白色申告の場合は専従者給与の額に金額制限があります。
まず、親子間で売買することが考えられます。ですが、こうしたケースはまれです。
仮に売買した場合、親に所得税(譲渡所得)がかかります。
相続対策としてみた場合、土地が売却代金に代わっただけで、節税効果は少ないでしょう。
親が子に贈与をした場合、所有財産を減らすことができるため、相続対策になります。ただし、贈与税がかかります。
もっとも、相続対策の条件としては、贈与税の税率が相続税の税率より低いことが必要です。
加えて、贈与の場合、相続時に生前の特別受益があったとして、遺産分割に影響がある場合もあります。
そこで、農地の全てを贈与する場合は、「農地の贈与の納税猶予制度」があります。
遺言書を作成するメリットは、相続人間の財産争いをある程度防ぐことができ、また遺産分割協議書の作成を省くことができることです。
こうしたことは、後継者である子の心理負担を軽減することにもつながります。
加えて、相続税申告の特例適用「相続税の納税猶予の特例」や「小規模宅地の特例」など、遺言書があることでスムーズに行うことができます。
遺言書の作成については、3つの方法(自筆証書、公正証書、秘密証書)があります。
実務上ほとんど用いられていない秘密証書遺言を除き、不備などで無効になるリスクを回避するため、費用がかかるものの、公正証書遺言の作成をオススメしています。