農業を営む個人※1が、昭和56年〜令和2年までの各年において、飼育した肉用牛※2を売却した場合には、売却により生じ農業所得に対する課税の特例(免税または収入金額の5%課税)を受けることができます(措法25)。
この特例は、①自分で飼育した肉用牛を特定の市場(家畜取引法に規定する家畜市場)にて売却、または②自分で飼育した生産後1年未満の肉用牛を特定の農業協同組合等に委託して売却、が対象となります。
※1 畜産業のみを行っている場合は特例の対象外となります
※2 農業災害補償法第111条第1項に規定する肉用牛等及び乳牛の雌が対象となり、乳牛の雌のうち、子牛の生産のためのものと牛の胎児を除きます
また、この特例は、飼育期間が極端に短く、単なる肉用牛の移動を主体とした売却により生じた所得は適用対象外であり、2ヶ月以上飼育した肉用牛(特定の肉用牛)の売却に限って適用されます。
特定の肉用牛のうち、次のいずれかの条件に該当するものを「免税対象飼育牛」といいます。
※3 一定の登録は次の通りです
※4 売却価額の判定について次の点に留意が必要です
※5 実質的に売却価額を補填すると認められる補助金
課税の特例の対象となる肉用牛の売却は、以下の市場等で行うものに限られます。
注:生後1年未満の肉用牛を委託して売却する場合に特例の適用対象となる委託先は、「肉用子牛生産安定等特別措置法」に規定する指定協会から生産者補給金交付業務に関する事務の委託を受けている「農業協同組合」または「農業協同組合連合会」で農林水産大臣の指定を受けたものに限定されます。
課税の特例を受ける場合は、次の点に注意して、「特定の肉用牛」の売却所得(課税の特例を受ける農業所得)とそれ以外の農業所得を区分して計算します。
「特定の肉用牛」の売却所得とそれ以外の農業所得に共通する必要経費は、 収入金額や飼育頭数などの合理的な基準により按分します。
青色申告者が課税の特例を受ける場合、青色申告特別控除は、①「特定の肉用牛」の売却所得以外の農業所得から控除し、控除しきれない場合は、②「特定の肉用牛」の売却所得から控除します。
「特定の肉用牛」の売却所得は、翌年以降に繰り越す損失額の計算において、「特定の肉用牛」の売却所得を含めて損益通算を行います。
【計算例】※農業所得以外の所得は無い
農業所得▲100万円(内訳:「特定の肉用牛」売却所得200万円、それ以外の所得▲300万円)の場合、農業所得を「特定の肉用牛」の売却所得200万円を除いた▲300万円として損失申告書を提出することはできません。
「特定の肉用牛」の売却所得を含む総所得金額に係る所得税の額から、「特定の肉用牛」の売却所得がないものとして計算した所得税の額を控除した税額が免税となります。
つまり、「特定の肉用牛」の売却所得に対する税金が免税となります。
売却した「特定の肉用牛」の中に免税対象飼育牛に該当しない牛がいる場合、または免税対象飼育牛に該当する肉用牛の頭数の合計が1,500頭を超える場合の、その超える部分の免税対象飼育牛が含まれている場合 (全て免税対象飼育牛に該当しない場合を含む。)には、選択により、次の①又は②のいずれかにより課税されます。
①次の合計額を所得税の額とする方法
A:免税対象飼育牛以外の「特定の肉用牛」の売却価額と、免税対象飼育牛に該当する肉用牛の頭数の合計が1,500頭を超える場合における当該超える部分の免税対象飼育牛の売却価額の合計額に5%を乗じた金額(収入金額の5%課税)
B:「特定の肉用牛」の売却所得がないものとして計算した所得税の金額
注:「免税」または「収入金額の5%課税」いずれか一方のみを適用することはできません
②免税対象飼育牛の売却所得を含む全ての所得について通常の総合課税により計算する方法
なお、 上記以外の補助金については、 免税所得以外の所得(課税所得)の収入金額に算入するが、 両建方式はとりません。