運転資金とは、会社が営業活動を行っていくにあたって、仕入→生産→加工→販売の各プロセスにおいて必要となる資金のことをいいます。
運転資金は、以下の計算式にて算出します。
運転資金 = (「売上債権(売掛金、受取手形)」 + 「棚卸資産(在庫)」)ー 「買掛債務(買掛金、支払手形)」
運転資金は、売掛金回収までの期間、原材料や仕掛品、製品の在庫滞留期間、買掛金支払いまでの期間など販売や仕入の条件によって変化します。
例えば、売上が増加する局面においては、収入と支出の差額が広がり、必要な運転資金は増加することとなります。
ですので、運転資金を正確に把握するためには平均月商と回転期間で確認すると良いでしょう。
上記の算出式は、次のように表現することもできます。
運転資金 = (平均月商 × 売上債権回転期間) + (平均月商 × 在庫回転期間) ー (平均月商 × 買掛債務回転期間)
算出式をみると、運転資金が必要となるのは、①売上が伸びたとき、②在庫の滞留期間が長期化したとき、③売上債権の回転期間が延びたとき、④買掛債務の回転期間が短くなったとき、となるのがわかります。
そして、運転資金は短期借入金か割引手形にて賄われるのが通常です。
「短期の資金需要には短期の資金調達手段を使う」、という考え方が基本となります。
上記の算出に関係するB/S科目について、気をつけるべきポイントがあります。
まずは月商の何ヶ月分あるか確認しましょう。最低でも月商の1ヶ月分は確保しておきたいところです。
業種にもよりますが、1.5ヶ月〜2ヶ月分あることが望ましいです。
現預金のうち、定期預金が担保に入っている場合は注意が必要です。
担保に入っている場合、実質的には使えないわけですから、運転資金とはカウントできません。このような預金を「拘束性預金」といいます。
期預金が担保に入っている場合、通帳は銀行にありますので、質権設定契約書があるか確認しましょう。
なお、手形割引などによる短期借入金をそのまま定期預金などに入れることを「歩積み両建て」といい、銀行による優越的地位の濫用として金融庁の銀行監督指針上禁止されている行為ですので、留意しましょう。
月商の何ヶ月分あるか確認が必要ですが、売掛金の中に不良債権がないか確認しておきましょう。
売掛金の入金がたびたび遅延するなど気になる取引先については、帝国データバンクなどの信用調査情報を利用して確認しておくことも必要です。
月商の何ヶ月分あるか確認するとともに、自社にとっての適正な在庫水準はどのくらいか考えておきましょう。
業種ごとに大まかな適正水準がありそれを目安にもできますが、その会社の販売状況などにも左右されますので、適正在庫水準は変化します。
現在の自社の適正在庫水準はどのくらいなのか、普段から意識することが必要です。
月商の何ヶ月分あるか確認するとともに、支払サイトと比較して残高が大きすぎないか確認が必要です。
残高が大きい場合、未払となっている可能性があります。
また極端な事例ですが、内容不明の支払手形が乱発されている場合(融通手形)は要確認事項となります。