融資先の会社に対する、銀行の信用リスク管理は、「信用格付」により決まります。
決算書の内容により、おおよそ自社がどの格付に位置するのか把握することは可能です。銀行からの融資を受ける上で自社はどのような位置付けとして見られているのか確認することはとても重要です。
銀行では与信管理ルールによって、以下のとおり、信用格付に応じた与信権限・許容範囲が決められています。
これらは銀行ごとにことなり、また同じ銀行でも支店によって異なりますが、基本的な仕組みは同じです。
信用格付により、融資先は以下の区分に分けられ、区分ごとに銀行の融資スタンスが変わります。
銀行からみれば、信用格付区分により引当金として積み立てなければならない金額が変わってきます。下の表では、信用格付が下に行くほど、銀行としては引当金として積みたてなければならない金額は多くなりますので、融資判断に慎重になるor返済を求められることになります。
信用格付 | 格付の評価 | 銀行の融資スタンス |
正常先 | 借入金返済に問題のない会社 | 積極的に融資する(プロパー融資可) |
要注意先 | 業績が低調・不安定であり、注意を要する会社 | 信用保証協会を利用した融資なら可能 |
要管理先 | 要注意先の中でも貸出条件や返済に問題のある会社 | 早期に回収していく |
破綻懸念先 | 財務内容に問題があり、経営破綻の可能性がある会社 | 融資対象外 |
実質破綻先 | 財務内容に深刻な問題があり、経営再建の見通しが立たないなど、経営破綻に陥る可能性が高い会社 | 融資対象外 |
破綻先 | 法的・形式的に経営破綻している会社 | 融資対象外 |
上記のうち、正常先と要注意先、要注意先と要管理先のいずれに区分されるかよって、自社に対する銀行の融資スタンスが大きく変わってきますので、注意が必要です。
格付は「決算書」に基づき決定されます。
決算書のデータは、まずシステム上で機械的に格付判定されますが、それを基にして「実質自己資本」や「実質キャッシュ・フロー」を算出し、定性評価がなされた上で、最終的に格付判定されます。
「実質自己資本」や「実質キャッシュ・フロー」における「実質」とは、返済原資という観点からみて実質的な価値があるかどうか、ということです。
実質を検討する上で、B/S(貸借対照表)においては、継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)の観点からみて、本業に必要な資産かどうかの選別をしていきます。
例えば不動産の場合、本業において使用されている工場や本社の土地建物などに含み損が生じていたとしても、そのまま本業において使用していくことが本質的な価値であると考えられるため、実質的な自己資本を毀損してはいないとみなします。一方で、本業に関係のない遊休資産に含み損が生じていた場合、自己資本を毀損しているとみなします。
P/L(損益計算書)においては、獲得した利益が本業から生じたものか否か、本業から生じた利益であれば、恒常的なものか一過性のものかを見極め、本業から獲得した利益であっても一過性のものあれば実質的なものではないとみなします。
ですので、例えば保険の解約による利益や有価証券の売却による利益計上など、一過性の利益を計上したとしても、実質自己資本や実質キャッシュ・フローが増えたとはみなされないので、融資審査上有利になることはありません。
なお、上記一連の判断は全て決算書を基にして行われますが、近年ではこうした判断をAIが行う「AI融資」が登場してきています。