決算書と聞くと、「税務申告のために必要だから作成するものだ」という考え方をもつ経営者が多くいます。
間違いではないのですが、決算書の役割はそれだけではありません。
ここでは、特に銀行融資において決算書が果たす役割について紹介したいと思います。
銀行融資は「格付」にはじまり「格付」に終わります。
「格付」とは、分かりやすくいうと、銀行内部のルール(与信規定)に従い会社をランク付けしたものです。
この格付を決めるために中心的な役割を担うのが決算書なのです。
なお、最近では、決算書を用いないAI融資や決算書だけで評価しない事業性評価融資もありますが、融資審査の中心が決算書であることは変わりありません。
銀行の与信規定では、格付に応じて与信の権限・許容範囲(決裁権限金額、総与信額、無担保許容額、返済方法、クレジットコスト)が細かく決められているのです。
与信規定は銀行ごとに異なりますが、基本的な考えは同じです。
また、各銀行の支店によって権限も異なります。
経営者の考え方や性格が表れるのも決算書です。
例えば、以下の決算書をみた銀行担当者は、会社に対してどのようなイメージを持つでしょうか?
このような場合、会社の財産が私的に使われているのではないかと疑いを持ちます。
いくらオーナーである経営者だからとはいえ、会社の財産を私的に使ってしまう経営者に良いイメージを持たれることはありません。
融資する側からみれば、貸したお金が私的に使われてしまうのではないかと疑念を抱くからです。
決算書は、それをまとめる顧問税理士の姿勢も表します。
例えば、融資を受けるための、会社の実態を適切に表さない決算書を作成してしまうこともあります。つまり、粉飾決算です。
こういったことをする税理士がいるのも事実で、銀行にはこうした税理士のブラックリストが存在するぐらいです。
顧問税理士の姿勢が銀行から信用されない場合、融資審査が厳しいものになることは想像に難くありません。
経営者にとっての銀行融資における決算書とは、資金調達の生命線としての役割を果たす重要なものです。
そして、「銀行と円滑なコミュニケーションをとるためのツールである」との意識を持つことが大切です。