NPO法人は、税制面において各種優遇措置を受けることができます。
主要なものについて紹介したいと思います。
法人税法上、NPO法人は公益法人等とみなされます。
すなわち、特定非営利活動に関連する所得に対しては法人税の課税対象とはなりません。
反対に、収益事業に関する所得には課税対象となります。
収益事業とは法人税法施行令に定められている34業種を指し、収益事業を継続的に事業場を設けて行っている場合に、ここから生じた所得に対して課税されます。
収益事業に該当するか否かの判定するにあたり、34業種の中でも特に気をつけたいのが、㉛一定の技芸教授業等です。
これは、技芸の教授、学力の教授、公開模擬学力試験を行う事業をいい、中でも技芸の教授とは下記のものが該当します。
法人住民税には、収益事業の有無にかかわらず課税される、法人住民税均等割があります。
均等割は、都道府県、市町村分あわせておおむね年間7万円(自治体により異なります)となります。
ただし、NPO法の趣旨等により、法人税法上の収益事業を行わないNPO法人に対しては、減免制度があります。多くの自治体で採用されているので所轄庁に確認が必要です。
収益事業を行っている場合でも、収益事業が赤字の場合、法人設立後数年間に限って減免される場合もあります。
消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供(国内取引)と外国貨物の輸入が課税対象になっています。介護保険法や社会福祉法などに定められたサービスなど非課税取引にあたるものは除き、消費税の課税対象となります。
以下では、国内取引に該当するかどうか、判定要件を確認します。
課税の対象となるのは、事業として行われる取引に限定されます。
NPO法人の場合は、すべて事業として行われたものと考えます。
寄付金収入のように反対給付のないものは、対価性がありませんので課税の対象にはなりません。
つまり、無償の取引は特別の場合を除き課税の対象になりません。
例えば、会員に配られる会報の場合、購読料として対価を受領している場合には、課税取引(消費税の課税対象)になります。
反対に、会員全員に無償で配る場合には、対価性がないので、不課税(課税対象外の取引)となります。
研修会の参加費用としての会費など、役務の提供を受ける対価としての会費は課税取引となりますが、同業者団体の年会費のように、役務提供の対価といえない場合には不課税取引となります。
また、消費税法では、資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供に該当するものであっても課税対象とすることがなじまないものや社会政策的な配慮から課税すべきでない取引について、非課税とされているものがあります。これを非課税取引といいます。
具体的には、土地の譲渡、住宅の貸付、社会保険医療、利子、保険料、住民票などの行政手数料、教科書の販売等が該当します。
NPO法人の主な事業について消費税の課税関係を一覧表にすると以下のようになります。
NPO法人の事業 | 課税・非課税・不課税の判定 | |
入会金・会費 | 入会金、通常会費 | 非課税※ |
研修会費、参加会費 | 課税 | |
実質的な購読料 | 課税 | |
補助金・助成金 | 国・地方公共団体から | 不課税 |
土地 | 譲渡 | 非課税 |
貸付 | 非課税(一時貸付けは課税) | |
建物 | 譲渡 | 課税 |
貸付 | 店舗・事務所は課税
住宅は非課税 |
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寄付金 | 寄付の受領 | 不課税 |
受取利息 | 預金からの利息 | 非課税 |
販売収入 | バザーなどでの物品販売収入 | 課税 |
借入金収入 | 銀行借入など | 不課税 |
介護保険事業 | 訪問介護 | 非課税 |
※会費の中には便益を受けていると思われる部分と寄付的な性格をもっている部分があるなど、課税・不課税のいずれに該当するか判定が困難な場合においては、NPO法人が不課税取引として継続して処理し、その旨を会員に通知し、会費を支払う側においても不課税としている場合にはこれを認める取扱いになっています
領収書の印紙税には、非課税規定が適用されるため、5万円以上の領収書でも収入印紙を貼る必要はありません。
一方で、契約書等の印紙税には非課税規定がないため、印紙を貼る必要が生じます。
職員の給与や原稿料、講演料といった報酬を支払った場合には、所得税の源泉徴収と納税も必要になります。
不動産取得税、固定資産税、都市計画税、自動車重量税、自動車税、自動車取得税、軽自動車税、事業所税などは課税されます。
NPO法人設立後、速やかに手続をしましょう。
収益事業を行わない場合には、都道府県税事務所と市町村の税金担当窓口に法人設立届出書を提出します。
法人住民税均等割分の免除申請手続も行うと良いでしょう。
収益事業を行う場合には、管轄の税務署、都道府県税事務所と市町村の税金担当窓口に法人設立届出書と収益事業開始届出書を提出します。
法定の会計処理方法以外を採用する場合は、税務署には、棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出も必要です。
また、設立後に収益事業を開始する場合には、その時点で収益事業開始届出書の提出が必要になります。