NPO法人の事業報告を正確に行うことは、寄付者などの利害関係者がNPOの活動実態を適切に把握するために必要不可欠です。
また、法人の理事が業務執行にあたり適切に意志決定するためにも、経営実態を会計数値で正確かつリアルタイムで把握することが必要です。
それらを実現するためには、会計処理を会計原則・会計基準に沿って正確に行うことが求められます。
今回は、NPO法人会計基準について紹介します。
NPO法人が、一事業年度における活動目標・方針のもとに、どのような活動をしたかを報告するのが事業報告です。そして、その事業報告を会計数値として表すのが計算書類となります。
どのくらいの収入や支出があったのか、財産状況はどうなのか、負債はどのくらいあるのかなど会計報告として表します。
そうした会計報告は、一定のルール、すわわち会計原則・基準に基づいて行われます。
各NPO法人が、自分勝手なルールの下に会計処理したのでは、会計報告を利用する側も混乱しますし、他法人との比較などできないからです。
NPO法人の会計は、次に掲げる会計原則に従って行う必要があります。
正規の簿記の原則とは、すべての取引につき正確な帳簿を作成しなければならないこといい、次の要件を充たすことが必要です。
会計には、目的に応じて財務会計、税務会計、管理会計の3つがあります。
すなわち、事業報告を適切に行うための財務会計、税務申告を行うための税務会計、そして、経営意志決定のための管理会計です。
会計がもつこの3つの目的・役割をしっかり把握することが重要なのは、NPO法人の会計においても一般企業と同様です。
NPO法人は、NPO法に基づき、活動計算書や貸借対照表等の計算書類等を作成し、会員や社会に公表する義務があります。
また、事業年度終了から3ヶ月以内に所轄庁へ事業報告を提出しなければなりません。
外部の利害関係者への情報提供のために行われる会計を財務会計といいます。
会員や寄附者などの支援者、またはこれから支援者になろうとする人は、このような計算書類等から活動や財産状況を読み取り、新たに支援をするか、支援を継続すべきかについて意志決定をします。
ですので、計算書類等には会計処理の誤りや偽りがあってはならないのです。
NPO法人にも一定の納税義務があります。
税金計算を行うためにする会計を税務会計といいます。
納税には期限があり、期限に遅れたり税額計算を誤ると、追徴課税等のペナルティーが生じますので注意しなければなりません。
理事が適切に意思決定を行うために、組織内部用に行われる会計を管理会計と呼びます。
予算管理や資金繰り計算などが代表的なところです。
NPO法人は非営利法人の一種で、利益の分配を目的としていませんが、活動継続のためには、費用を上回る収益を上げ、繰越金(剰余金)を出すことが重要ですし、助成金や補助金を受けたときには、予算に従った支出義務が生じ、日常的な管理が不可欠です。年度末にバタバタと収支をあわせるように支出したりすることは避けなければなりません。
2012年3月、内閣府は「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」を公表し、「NPO法人会計基準」を適用すべき会計基準としました。(同手引きの最新版は2017年12月版)
支援者や社会に対する説明責任を果たすため、または認定NPO法人申請のためにNPO法人会計基準に準拠することが求められていますが、実態に応じて公益法人会計基準や社会福祉法人会計基準などのその他の会計基準を用いることも可能です。
NPO法人会計基準では、活動計算書、貸借対照表、注記の3つを財務諸表としています。
さらに、上記に財産目録を加えて財務諸表「等」としています。
なお、NPO法上では計算書類としていますが、呼び名が異なるだけで中身は同じです。
活動計算書は、企業会計における損益計算書に該当します。現金主義ではなく発生主義を採用しています。
活動計算書は、収益の部と費用の部に分類して構成されます。
収益の部は資金の種類別に分類します。
費用は事業費と管理費に分類し、さらに、それぞれを人件費とその他経費に分類します。
事業年度末におけるNPO法人の全ての資産、負債、正味財産の状況を表します。
重要な会計方針や事業別内訳、NPO法人に特有の取引に関する詳細などを記載します。
活動計算書と貸借対照表だけでは説明しきれないことを記載することによって、より丁寧な情報公開となります。
財産目録は、貸借対照表の詳細版とも言えるもので、資産や負債の明細を記載するものです。