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労働組合向け会計監査

労働組合に対する会計監査とは

労働組合は、労働組合法により公認会計士・監査法人による会計監査の実施が義務づけられています

すなわち、労働組合法第5条第2項第7号において「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。」と定められていることを根拠とします。

 

労働組合が準拠する会計基準と特徴

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労働組合が準拠する会計基準

労働組合の計算書類は、広範囲の利用者に共通する財務情報に対するニーズ を満たすことを目的として作成されるものではなく、特定の利用者(組合員)の財務情報に対するニーズ(会計報告)を満たすことを目的として作成されるものであり労働組合が準拠する会計基準として広く採用されている公益法人委員会報告第5号「労働組合会計基準」(昭和60 年10月8日 日本公認会計士協会。以下「労働組合会計基準」という。)は、特定の利用者(組合員)の財務情報に対するニーズ(会計報告)を満たすことを目的とした計算書類の作成において適用される財務報告の枠組みとして受入可能なものであると判断できる、とされています。

 

労働組合会計基準には、「この会計基準は、労働組合会計に関する一般的な規範を示すものとして作成したが、その適用にあたっては、労働組合会計に携わるもののガイドラインとしての役割を期待した」ものであるとし、「労働組合の計算書類は、構成員である組合員に対してのみ報告されれば、その目的は達せられる。したがって、本会計基準の適用に関しては、個々の労働組合にその判断がゆだねられる」との記述がなされています。

ですので、労働組合会計基準は、企業会計の基準のように適用が強制されているわけではありませんが、おおむねこの基準に基づく形で計算書類が作成されていることが多いのが実情です。

 

労働組合会計基準で定められている一般原則は、次のとおりです。

  1. 真実性の原則・・・計算書類は会計帳簿に基づいて収支及び財産の状況に関する真実な内容を示すものでなければならないというもの、あらゆる会計基準に定められた会計基準の最高規範
  2. 明瞭性の原則・・・計算書類の表示に関して明瞭な表示をすること
  3. 複式簿記の原則・・・収支計算などを単式簿記ではなく複式簿記に基づいて会計処理しなければならないもの
  4. 継続性の原則・・・一度決定した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法についてはみだりに変更することができないもの
  5. 重要性の原則・・・会計事象等の計算書類に与える重要性が乏しい場合には、必ずしも会計処理及び手続並びに表示について厳密性を求めないとするもの

 

労働組合の計算書類の体系

労働組合法第5条第2項第7号においては、「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告」をしなければならないこととなっています。

これに対して、労働組合会計の計算書類の体系としては、労働組合会計基準解釈指針においては計算書類を収支計算書、貸借対照表及び附属明細表とし、財産目録は計算書類の体系から除くこととした。」とされています。

したがって、「すべての財源及び使途」を示す計算書類として収支計算書、「現在の経理状況を示す」計算書類として貸借対照表、「主要な寄附者の氏名」及び現在の経理状況としての明細を示す計算書類として附属明細表が作成されることで、法令と一致させていることと思われます。

名称 内容
収支計算書 当会計年度のすべての収入・支出を明らかにするもので予算額と決算額を比較する構成となっているもの
貸借対照表 当会計年度末のすべての資産・負債・正味財産の状況を明らかにするもの
附属明細表 収支計算書および貸借対照表を補足する重要事項を記載したもの

 

 

予算準拠主義

労働組合においては、その活動方針及び納入された組合費の使途については、あらかじめ大会等で承認する必要があります。

つまり、活動計画に基づき労働組合の執行部が予算案を編成し、その予算案が大会で承認されることになります。

予算案の承認により、労働組合執行部が行う活動に対する組合費の使途について一定の制約がかけられることになり、予算による制約が、一定の内部牽制機能を有するとされています。

よって、会計基準上労働組合会計の収入及び支出は、原則として収支に関する予算に基づいて行われなければならない(予算準拠主義)として定められています。

 

資金収支会計

労働組合会計の構造は、企業会計のような損益計算構造とは異なり、基本的に資金収支会計となります。

すなわち、現金預金として入金されたものは「収入」、現金預金から出金されたものは「支出」と会計処理されますが、これでは会計の原則でもある発生主義的な収支計算ができないので、「現金預金」か ら「資金」という概念を用い、資金として入金されたものは「収入」、資金から支出されたものは 「支出」として整理します。

労働組合会計と企業会計とが大きく異なるものは次のとおりです。

 

1.固定資産の取得

労働組合会計においては、 資金からの出金はすべて支出となりますので、固定資産の取得支出は、業務運営費等の費用 として支出された会計処理と同じく、収支計算書に支出として計上され、このままだと貸借対照表に固定資産が計上されないこととなります。

このため、固定資産を貸借対照表に計上させるため、「固定資産等見返正味財産」の勘定科目を用いて支出処理し、貸借対照表に計上されない固定資産を固定資産等見返正味財産勘定と両建て処理します。

借方:固定資産購入支出  貸方:現金預金

借方:固定資産      貸方:固定資産等見返正味財産

 

2.借入金の処理

借入金も「固定資産等見返正味財産」勘定を使用することにより貸借対照表に計上します。

借方:現預金          貸方:借入金収入

借方:固定資産等見返正味財産  貸方:借入金

 

3.非資金取引の会計処理

固定資産の減価償却費や将来の職員等の退職金引当などの非資金取引の会計処理は、「固定資産等見返正味財産」勘定の増減で会計処理します。

 

本部・支部会計

全国規模で活動している企業の労働組合では、例えば、本社所在地に本部があり、各地に支部がある場合があります。こうした場合、各支部の活動に必要な予算が支部単位で設けられ収支報告を作成していることが多いです。

支部を設置している労働組合は、当該支部を含めた収支の状況を明らかにする計算書類を作成する必要があることから、本部と支部の収支計算書を合算しますが、本部が支部に対して支払う負担金支出と支部が本部から受領する負担金収入などは内部取引なので原則として相殺する必要があります。

 

一般会計と特別会計

労働組合の中には、通常の活動の収支を計上する一般会計の他に、特別の目的を定めて徴収した資金を財源として組合活動を実施する場合や、将来の特定の支出に備えるため、あるいは特定の資金を区分して管理する場合に特別会計を設置することがあります。

例えば、周年事業特別会計や共済事業特別会計、収益事業特別会計などがあります。

こうした特別会計を設置した場合は、会計ごとの活動状況を明らかにする計算書類を作成する必要があり、また一般会計と特別会計を総合(合算)した総合貸借対照表を作成する必要があります。

 

労働組合の主な収入・支出

労働組合の主な収入は組合費収入です。

多くの労働組合では、企業側と労使協定を締結することにより、企業が組合員の給与から組合費を控除してまとめて労働組合に引き渡すチェックオフが導入されているため、組合費の未納は発生しにくくなっています。

なお、労働組合が実施している共済事業で生命保険に加入している場合は、組合費のほかに保険料が企業から引渡される場合もあります。

労働組合の主な支出は、専従者や事務職員の人件費、メーデー等に必要な経費、定期大会の開催費、上部団体への負担金、共済事業に係る保険料の納付金等が挙げられます。

 

また、「予備費」が予算書で計上される場合があります。

例えば消耗品費で予算が不足して予備費から執行した場合に、予備費からの執行額を「予備費の決算額」の欄に記載すると、どのような取引に予備費を充当したのか判らないため、予備費の「予算額」を消耗品費の予算額に振り替 え、執行額も「消耗品の決算額」の欄に記載します。

また、予備費をどの勘定科目に振り替えたのかを注記することが適当です。

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労働組合に対する会計監査

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労働組合法第5条第2項第7号において、労働組合は職業的に資格のある会計監査人による正確であることの証明書とともに、組合員に対して会計報告を行わなければならないと規定されています。

これに対して、日本公認会計士協会は、非営利法人委員会実務指針第37号「労働組合監査における監査上の取扱い」(平成28年1月26日改正)を発出しています。

上述のとおり、労働組合監査としては、労働組合が作成する計算書類が、広範囲の利用者に共通する財務情報に対するニーズを満たすことを目的として作成されることでなく、特定の利用者(組合員)の財務情報に対するニーズ(会計報告)を満たすことを目的とされていると法令より解釈できること等により、労働組合会計基準等に準拠して作成されている旨の準拠性の枠組みにおける監査意見の表明をすることとなります。

 

監査基準では、リスクアプローチに基づく監査が求められ、計算書類に虚偽の表示が含まれるリスクを特定し、それぞれのリスクに応じた手続を実施することで、効果的かつ効率的に監査を実施するものとされています。

実際に適用する監査手続・範囲は、リスクに応じて会計監査人が判断することになりますが、主な監査手続は次のとおりです。

 

  • 分析的手続・・・資産・負債残高や収入・支出の取引について、増減分析や比率分析等を行い、異常値の有無を確認するもの
  • 証憑突合・・・請求書や領収書、入出金記録、稟議書等の証憑と個々の取引(伝票)を照合するもの
  • 実査・・・保有する現金や預金通帳、有価証券等の現物を会計監査人自らが確認するもの
  • 確認・・・預金や借入金、債権債務等について、金融機関や取引先等に対して、会計監査人自らが取引の有無・金額について文書で問い合わせて直接回答を得るもの

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標準報酬

労働組合に対する会計監査報酬は、監査に要する工数(労働組合の規模、支部数など)により変動します。

目安としては、年額30万円(税別)〜となりますが、別途御見積となりますのでお問い合わせください。

 

 

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